BambooRollが環境に良いか、定量的に考える尺度はいくつかありますが、この記事では、BambooRollのカーボンフットプリント、つまり製品のライフサイクルで排出される温室効果ガスをCO2量で表したものを試算します。(執筆:おかえり株式会社 大塚雅和)
カーボンフットプリントの算出方法
カーボンフットプリントの算出は以下のようにして行う。製品のライフサイクルで様々なリソースを使用する。そのリソースについて、ある単位のリソースを使うとCO2に換算すると何kg排出しているか、予め算出してある二酸化炭素排出量原単位(以降、CO2排出原単位)を参照する。このデータベースには4)を使用する。使用したリソースの量に、CO2排出原単位をかけると、CO2排出量が求まる。製品のライフサイクルで使用するリソースについて、CO2排出量を求め積算していく。
余談だが、積み上げで製品のカーボンフットプリントを算出していく、ツリー構造の取り組みは非常に面白い。トイレットペーパーの材料のカーボンフットプリントの試算を使用して、トイレットペーパーのカーボンフットプリントを試算できる。それとさらに他のカーボンフットプリントの試算を使い、例えばオフィスのカーボンフットプリントの試算ができるだろう。1人あたりトイレットペーパーを月に4ロール使うとしてX人用のオフィスのトイレは、水や電気代を加え、月にYkgのCO2を排出すると試算できる。このようにしてあらゆるモノや活動のCO2排出量を試算できればCO2の削減を進めやすいだろう。
試算にあたって、トイレットペーパーのカーボンフットプリントを算出した2)と3)とBambooRollの類似性や違いを考慮する。2)と3)は同じくトイレットペーパーを扱っているものの、CO2排出原単位は異なる、ライフサイクルに含む活動の粒度も異なるなど、直接細部を比較できる数字ではないことには注意。弊社で2)と3)以上に一次データを得られたわけでもないが(今後の課題)、BambooRoll製品のライフサイクルの特徴という知識を用いてeducated guessを目指す。
対象範囲は、比較しやすいよう2)にならって1原材料調達段階, 2生産段階,3流通・販売段階,4使用・維持管理段階, 5廃棄・リサイクル段階の5段階とする(図1)。
BambooRollのライフサイクルについての知識について。BambooRollは、3)の工場に近い地域にある工場で生産を行う。この地域の電力は、100%水力で発電していることを確認済み。流通段階では、製品は中国から海運で東京の倉庫に移動する。BambooRollの販売は基本的にオンラインであり流通段階には、倉庫から一å般家庭に運ぶ段階を含む。
2)より
2)より
3)より
2)の機能単位は「機能単位は,芯なしタイプのトイレットロール(シングル,130m 巻)6個を低密度ポリエチレン(LDPE)で包装した製品(以後,パック製品)1個」。
3)の機能単位は「Functional unit (FU) = 1 carton, 6.58kg, 48 rolls per carton」。
BambooRollは1パッケージに竹100%パルプを材料とするトイレットペーパーが18ロール入り、古紙パルプを材料とする段ボールのパッケージを含めて合計で2.68kgである。2),3)の数字と比較するため、2)と3)のCO2排出量を1FUに含むトイレットロール数で割り1ロール単位に換算する。
1 原材料調達段階
3)の「Harvesting」「Local transport of stems」が2)の「Raw materials procurement stage」に相当するとした。
BambooRollのHarvesting、Local transport of stemsステージの排出量は3)同等とした。
BambooRollでは包装に段ボールを使用している点で3)と一致するため、BambooRollと3)の間の包装の差は無視する。
2 生産段階
3)の「Pulping」「Tissue factory」が2)の「Production stage」に相当するとした。
BambooRollのPulping、Tissue factoryステージの排出量は3)同等とした。
3 流通・販売段階
3)の「Local transport of product」「Riverboat to Shanghai」「Shipping to UK」「Storage」「Delivery」までが2)の「Distribution and selling stage」に相当するとした。
BambooRollでは、出荷先がUKではなく日本であるため、「Shipping to UK」以降からの試算を独自で行う。
上海から日本への海運は1)附属書 Kより1928km。40フィートコンテナには2700FU積み込むことができる。40フィートコンテナ自体は4,500kgとして、2700FU積み込むとコンテナ全体で11.74t。コンテナ船は20,000te船として4)より9.52E-03 kg-CO2e/te,km。
日本の港から倉庫までは60km。40フィートコンテナをトレーラーで引いて運搬する。4)よりトラック輸送(20トン車:積載率50%)として 1.13E-01 kg-CO2e/te,km。
Storageは2),3)同様に無視する。
販売はBambooRollはオンラインショップのみである。オンラインショップから購入する場合のCO2排出量は無視する。
BambooRollはサブスクリプションで購入し自宅まで配送する。完成品の倉庫から近くの宅配センターまでの配送は、2)にならい附属書 Jの輸送距離500km, 4トントラック(軽油), 積載率50%とする。積載率50%、2トンでは746FU積載する。この条件では4)より3.25E-01 kg-CO2e/te,km。
宅配センターから配送先住所までは、1)附属書 J(ア)を参考に宅配センターと配送先住所が50 km,軽トラック, 積載率10%とする。この条件では4)より7.40 kg-CO2e/te,km。
4 使用・維持管理段階
販売後の使用・維持管理段階で発生するCO2は0とした。
5 廃棄・リサイクル段階
3)の「Disposal」「Transport」が2)の「Disposal and recycling stage」に相当するとした。
BambooRollのDisposal、Transportステージの排出量は3)同等とした。
結果
このように、3 流通・販売段階のみ国内のBamboorollの物流の実情に則して独自で試算し、それ以外のステージでは3)に従い試算した結果を以下に示す。
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※「リサイクル」の数字は2)より抜粋
※「竹」の数字は3)より抜粋
考察
BambooRollの試算は、3)の数字と独自で試算した結果が混じっているため一貫性に欠けることには注意。
2)の考察にあるように、生産ステージのエネルギー使用に伴うCO2排出量が大きい。対して3)やBambooRollでは100%水力から工場のエネルギーを調達できる点で2 生産段階のCO2排出量が小さく結果の差に寄与している。
BambooRollでは中国から輸入し家まで宅配している。このCO2排出量増加分はどう考えれば良いか。
差の大きい生産ステージでは、2)と3)で集計している項目も違えば原単位も違う。2)の生産ステージのCO2排出量のうち電力のみのCO2排出量を考える。4129.79kg-CO2e/dayで33,325個のトイレットペーパーを生産しているので1rollに換算すると123.92g-CO2eとなる。これを水力のみで発電した場合5)より10.9g-CO2/kWhを適用し1rollあたり2.82g-CO2e。
電源が水力である点以外はBambooRollの生産ステージが2)同様だったとして、BambooRollの工場が水力発電であることによるCO2削減効果が3流通・販売段階の増加分を十分カバーできる。
試算に含まれていない項目は、オンラインショップの運営に関するCO2排出量、パッケージである段ボール箱のリサイクル時のCO2排出量。個人宅への再配達や積載率の低下が起こると3 流通・販売段階のCO2排出量が増す可能性はある。
参考文献
1) カーボンフットプリント制度 商品種別算定基準(PCR)(原案)対象商品の名称(PCR名称)紙・板紙
2) 「トイレットペーパーのカーボンフットプリント(CFP)の試算 ―富士市の家庭紙工場の例―」
3) 「A comparative environmental assessment of the use of bamboo in toilet tissue manufacturing」Steven V Shelley MA BSc, Hope Valley, England May 2020
4) カーボンフットプリント制度試行事業CO2換算量共通原単位データベースver. 4.0 (国内データ)
5) 電力中央研究所「日本における発電技術のライフサイクルCO2排出量総合評価」