今、世界中で温暖化による森林火災や異常気象が発生しています。日本においても、毎年のように豪雨災害に見舞われ、国ではなく自治体が自ら「気候非常事態」を宣言するなど、もはや温暖化は他人ごとではなくなってきています。
2020年10月、菅義偉首相は就任後初めての所信表明のなかで、日本政府として初めて「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことを表明しました。つまり、脱炭素社会の実現を目指す政府の計画づくりが具体的に始まることを意味しています。
それでは、どのように脱炭素社会を実現したらいいのでしょうか。その具体的なアクションが示されていることで、プロジェクト「DRAWDOWN」が話題になりました。2017年には書籍『DRAWDOWN』も出版され、2020年12月に日本語訳が発売されました。
この記事では、プロジェクト「DRAWDOWN」のWebサイトより、温暖化防止のためのアクション、また竹によってどのような問題解決ができるのかを一部引用して紹介します。
プロジェクト「DRAWDOWN」とは?
“DRAWDOWN”とは、日本語で“ひっくり返す”という意味ですが、プロジェクト「DRAWDOWN」では、社会起業家・環境活動家のポール・ホーケン氏が、世界中の科学者たちと協働して検証と評価、ランキング化した、地球温暖化を逆転させる100の方法が提示されています。
そして「増え続ける温室効果ガス(CO2二酸化炭素ほか)の排出量が減少し始めるポイント」を「ドローダウンの時点」とし、この時点が2つのシナリオで計算されています。(シナリオ1は、2100年までの気温上昇が2℃とほぼ一致しており、シナリオ2は、今世紀末の気温上昇が1.5℃とほぼ一致しています。)
温暖化防止のためのアクションとは?
それでは、実際に温暖化防止のためのアクションを見ていきましょう。(以下引用)
温暖化防止のためのアクションリストは、プロジェクト「DRAWDOWN」のWebサイトを参照
“ここに示された結果は、世界全体の排出量の影響を予測したものである。与えられた解決策の相対的な重要性は、文脈や特定の生態学的、経済的、政治的、社会的条件に応じて大きく異なる可能性がある。私たちは、これらすべての解決策の多くの特殊性やニュアンスについて、より深く掘り下げていきたいと考えています。”
上位には、陸上風力発電、大規模太陽光発電、食料廃棄(フードロス)の削減、菜食中心の食生活、健康と教育、熱帯雨林の保護、非効率的な調理用燃料の改善、分散型太陽光発電、冷媒(冷却材)のマネジメントなどが並びます。そしてシナリオ2では、21位に「竹の生産」が挙がっています。
カーボンニュートラルの観点で「竹」はどのように有効なのか
「竹の生産」について、もう少し細かく見ていきましょう。「DRAWDOWN」のWebサイト(https://drawdown.org/solutions/bamboo-production)では、竹から男性と女性が生まれたというフィリピンの神話があるように、これまでに建物から食料、紙など、千以上にもわたる用途で竹を活用してきたことに加え、地球温暖化対策にも役立つことが、以下のようにまとめられています。(以下引用)
“竹は、バイオマスや土壌中の炭素を急速に吸収し、劣化した土地でも成長することができます。長寿命の竹製品は、長期的に炭素を蓄えることもできます。”
“現在、竹は3,352万ヘクタールに植えられています。今後、さらに6,980 万~1,743万ヘクタールの劣化林地で竹が栽培されると想定しています。当社の炭素隔離計算には、生きたバイオマスと長寿命の竹製品の両方が含まれており、1ヘクタールあたりの年間炭素量は2.03 トンで、2050 年までに8.3~21.3ギガトンの二酸化炭素が隔離されることになります。竹をアルミニウム、コンクリート、プラスチック、鉄などの代替品として利用する場合には、排出量を大幅に削減できる可能性がありますが、これらの追加的なメリットは含まれていません。”
また、竹には、コンクリートの圧縮強度とスチールの引張強度があることも示されていますが、周囲の植生に侵食するため、適切な場所で育てることが必要であることが書かれています。(以下引用)
“木ではなく草である竹は、コンクリートの圧縮強度とスチールの引張強度があります。竹は一気に完全な高さに達し、4年〜8年で成熟し、パルプのために収穫されます。伐採されたあと、竹は再び芽を出し、育ちます。竹は周囲の植生に侵略をする種であるため、在来の生態系に有害な影響が広がる可能性があるため、適切な場所を選択し、その成長を管理することが必要です。”
技術評価の参考文献:https://drawdown.org/sites/default/files/solution_references/Drawdown2020_BambooProduction_References.pdf
いかがでしたでしょうか。竹は、アルミニウム、コンクリート、プラスチック、鉄などの代替素材として利用すれば、さらに大幅に年間炭素量を削減できるとされていますが、森林と同様に、適切に管理がされているFSC認証の取れた竹林を増やすこと、またそうした管理された竹林の竹を使うことが大切になりそうです。